妊娠と甲状腺ホルモンの関係について|八尾市の内科・美容皮膚科、歯科|みらい内科歯科クリニック

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妊娠と甲状腺ホルモンの関係について

内分泌代謝内科医の濱澤です。今回は妊娠と甲状腺ホルモンの関係とその際の注意点についてご説明させていただきます。

妊娠中、甲状腺ホルモンは母体の健康だけでなく、胎児の成長と発達、特に脳や神経系の発育に重要な役割を果たします。胎児の甲状腺が機能を始めるのは妊娠12週以降であり、それまでの期間は母体の甲状腺ホルモンに依存します。着床後に、絨毛組織から産生される性腺刺激ホルモンである、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)は、妊娠8~10週をピークに分泌され、わずかに甲状腺の刺激作用を有するため、妊娠初期にはFT4(甲状腺ホルモン)の軽度上昇とTSH(脳の下垂体から分泌される甲状腺ホルモンを調整するホルモン)の軽度低下をしばしば認めます。妊娠中・後期にはFT4は非妊娠時に比べて低い値を示すことが多いです。そのため、妊娠中後期は、甲状腺機能亢進症のバセドウ病では薬剤の容量が減ることが多く、一方で甲状腺機能低下症の橋本病ではホルモンを補充するチラーヂンの容量を増やすことが多い印象があります。



・妊娠と甲状腺機能低下症(橋本病)

母親の甲状腺ホルモンが不足すると胎児の発育および妊娠経過に悪影響(流産・早産など)を及ぼします。
甲状腺機能のコントロールは、TSHを指標に行います。TSHは甲状腺ホルモンが不足すると上昇します。甲状腺学会では妊娠前と妊娠初期のTSH値は2.5μU/ml未満妊娠中期(14週~)はTSH3.0μU/mlにするよう推奨しています。妊娠前から甲状腺ホルモン薬(チラージンS)を内服している方は、妊娠中は甲状腺ホルモンの必要量が増加するため、増やす必要があることが多いです。チラージンは非常に安全な薬剤で、妊娠中、授乳中も安全に服用することができます。服用しないことで、甲状腺機能低下症になることは好ましくないので、自己判断での中断はしないようにしてください。

・妊娠と甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

バセドウ病患者さんが妊娠しても,甲状腺機能が改善すれば,一般の妊婦さんと変わりなく出産することができます。しかし、妊娠初期(12週位まで)にメルカゾールを服用していると、臍腸管遺残や臍帯ヘルニア、頭皮の欠損などの頻度が増える可能性があります。妊娠初期(12週まで)は胎児への影響を考慮してプロピルチオウラシル(チウラジール)が推奨されています。妊娠初期にメルカゾールを飲むことをできるだけ避けるため,妊娠は可能なかぎり計画的にしてください。妊娠初期の期間、チウラジールやヨウ化カリウムへの変更を行う、あるいはあらかじめ手術治療を行うなどの方法で、リスクを回避する方法を検討することができます。また、バセドウ病の刺激抗体であるTRAbは、胎盤から胎児に移行します。母親のTRAbが非常に高い場合は、新生児バセドウ病のリスクがあります。そのため、妊娠前にバセドウ病の病勢を落ち着かせておくことが大事です。



・妊娠中の甲状腺疾患による胎児へのリスク

・甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):母体では流産や早産、妊娠高血圧症候群のリスクが高まり、胎児には胎児発育不全や甲状腺機能異常のリスクがあります。バセドウ病の原因となっているTRAb(TSHレセプター抗体)が高い場合は、新生児甲状腺機能亢進症のリスクがあるため、新生児科の医師と連携して診療を行っていきます。

・甲状腺機能低下症(橋本病など):未治療の場合は流産・早産、低出生体重児、胎児の発育の遅れのリスクが高まります。



・出産後の甲状腺疾患について


出産後に発症する無痛性甲状腺炎を産後甲状腺炎といい、出産後7-8%程度の頻度で生じるとされます。
産後2~3か月での甲状腺機能検査をお勧めしています。長期的には、2~3割程度の頻度で、その後も甲状腺機能低下症となり、甲状腺ホルモン薬(チラージンS)の内服を要することもあります。橋本病に関係する自己抗体である抗TPO抗体が陽性の方は、特に注意が必要です。

・ヨード食品の注意点

ヨードは海藻類などに含まれる成分ですが、食べ過ぎると甲状腺ホルモンが低下することがあります。下の表は1回の食事で摂取されるヨード量です。特に昆布やヨードを含むうがい薬には注意しましょう。



妊娠中の甲状腺疾患は、適切な治療と管理を行うことで母体と胎児の健康を守ることが可能です。当院では甲状腺の専門医が血液検査やエコー検査を通して専門的に診療を実施しておりますので、甲状腺のご病気でご不安な方はお気軽にご相談ください。